今日の新聞を見て妄想が浮かびました


私は仕事を終えいつものように軽トラックを飛ばして峠に向かった。
最高地点を越える手前のカーブを大きく曲がった時
私は急ブレーキを踏んだ。
30m程先に淡い緑色に光った小さい物体が何十という数浮かんでいる。
それはかすかに動いているがホタルではない。
目が暗闇になれてくると光のまわりに黒い輪郭が浮かびあがってきた。
それは漆黒の肌を持つ牛の群れだった。
緑の眼を持つ牛達は思い思いの姿勢を保ちつつ
首から上だけをこちらに向け私を見ている。
悲しそうな眼は何かを訴えている。
何秒か何十秒か、わたしは牛達とにらめっこをした。
ふと我にかえると突然心が恐怖で満杯になり。
私は車をUターンさせ峠をころげるように下った。
何度もバックミラーを見るが何者も追っかけてくる気配は無い。
よかった。ホッとした。車の速度を落とした。
「いったいあれは何だったんだろう?」
あの事故から半年が経った。
悲しい映像も見かけることは随分減った。
しかし現実はまだまだこれからも続くのだということを
私は思い知った。

shinya