雨の中 ティム・バートンの 胸の中

何カ月待った事だろう。やっとティム・バートンの本物の作品が見れるのだ。
いつだったか彼の絵を見た時、異様な雰囲気に身が竦んだ。が、その異様さに癒されている自分に気がついた。それから心に引っ掛かりつつ時は過ぎ、映画『シザ− ハンド』にぶつかった。異様だけど優しくて、切なくて、柔らかくて、突き刺さる鼓動が伝わってきた。
その本物に出会えるのだ。
大阪の新名所、グランフロントの会場まで雨の中、参上した。
会場は暗く、作品群だけが明るく照らされ、まるで彼の胸の中へ、頭の中に潜り込んで行くようだった。  もう描きたくて描きたくて、抑えられない感情が、私にも伝わってくる。
メモ用紙を使ったシリーズが魅力的。彼はメモ用紙の穴にもアートを感じたのだろう。ただ ヒマだから…ではなく一杯次々と描きたかったに違いない。このシリーズにエネルギーを感じた。
レストランやホテルの紙ナプキンに書いたシリーズも。
儚いものに思いを乗せる…というか、儚さに挑んで行く気合いが感じられ、思わず息を止めて見入ってしまった。額に入ってるから飛ぶ事は無いのにね。  スケッチやデッサンも油絵も、彼の手が今動いているのが見えた。
オブジェに至っては、グロテスクさ さえ可愛くなるものばかり。
きっとこの人は優しくて、幸せだったんだ。
だって見ている私まで幸せを感じ、細胞が光り出すのが感じられるのだもの。
                                    M・Y