素敵だったなぁ 杉山先生

忘れる事の出来ない人がいた。
でも、毎日の中で思い出す事はあまりなかったけど、5月19日にその人の訃報を知った。詩人・杉山平一 とあった。私にとっては詩人ではなく映画人だった。短大生の頃の先生は素敵だった。紳士だった。優しくて静かでみんなの憧れだった。
先生の講義の日は全員休まなかったわ。早く行って一番前の席に座りたかった。
詩論も楽しかったけど映画演劇論が大好きだった。
歌舞伎、狂言、能、の講義は今でも覚えている。白洲正子の資料を読み漁ったのもあの頃だった。
まだまだ子供だった私達に熱く語って下さったのは映画論だった。
映画に無駄な映像は無く、すべてが監督の目を通した美であり、ストーリーの複線である事も知った。
特にチャップリンのことを愛おしそうに話しておられた。
そして、私のレポートを凄く誉めて下さり、良い点を貰ったのを覚えている。そのレポートは「ウエストサイド物語における美」な〜んて書いたのだ。
その頃のミュージカルはただ美しく甘ーいものばかりでウエストサイドは衝撃的だった。けっして綺麗とは言えなかったけど、アパートの裏階段とか夜の倉庫の場面が私にはとても美しく思えた。これからの美はこれや! と感激したものだ。中・高の勉強は嫌いだったけどこの頃の勉強はおもしろかったなぁ。
そして、私の書いたもう一つの作品を「まるでチャップリンの 街の灯 のようですね」と言って下さったのが忘れられない。
杉山先生。映画のこと 演劇のこと そして詩のことを教えてくださってありがとうございました。
私が宝物にしている言葉がある。
≪詩は平易な言葉で深い心を書け
難しい言葉で心を惑わすな 誤魔化すな   簡単な言葉ほど難しいものは無い≫ というもの。  先生に教えて貰った一番の講義です。
                                       M.Y