ビールにまつわる話その1


正直に言うと、若いころは、少しビールを飲んで運転したこともあった。
もちろん今は絶対にそんなことはしないし、人にもさせない。
自分自身の認識不足が一番の罪であるが、
最初にビールを飲んだ環境が少し影響していたのかもしれない。
大学を卒業してアメリカにつてを訪ねて渡った。
最初に行ったのがテキサスの田舎町である。
ちょっと街中を車で走ればすぐにトウモロコシ畑に出てしまう。
町で遊戯施設というとたった一軒の映画館と
4レーンしかないボーリング場、
そんな所では飲むという行為は不可欠なのかもしれない。
御世話になった家族もとんでもない酒好きのメンバーだった。

朝起きると若いジョニー君が冷蔵庫の前でごそごそしている。
私に気が付くと「Oh! Shinya good morning」といいながら
缶ビールを投げてよこす。
それを手に不審な顔をしている私に言い放つ。
「大丈夫、ビールはアルコールとちゃうから」
おいおい、これは立派な酒やろうと思いながら二人で「プシュー」とする。
日中はその調子でどんどん缶ビールを開け続け、
お天とう様が沈むとそれにバーボンとウオッカが加わる。
毎日が大宴会である。
ある時家族といっしょに隣のニューメキシコまで旅行することになった、
ばかでかい車のトランクには旅行鞄と共に保冷ケースに詰まったビールがどんどん積まれる。
まさかの予想があたり、現地につくまでに30本ほどあったビールは
見事に空っぽになってしまった。
そんなこんなでそれまではお茶好きだった私の趣向は、
テキサスでの1週間でまったくコペルニクス的転回をしてしまったのである。
 
また続く

shinya