8月6日

子供の頃夏休みになると四国の、母の実家に帰っていた。
山の中腹にある家の濡縁から海が見渡せた。その海を見下ろすように軍人墓があった。痺れるような日差しと、小さな港町から広がる海岸線と、蝉しぐれしか聞こえない朝、ラジオから広島からの放送が聞こえていたっけ。
子供の時の8月6日の思い出だ。
それから色んな事を見た。聴いた。そして、知った。
そんな中、忘れられない本がある。と言っても本の名前を忘れている。嫌ですね〜
文中に出てくるのはその日に見た主人公の記憶の部分。
真っ赤に、ゴーゴーと、燃え盛るように咲き誇るカンナの群れの描写だった。

本の名前も、作者も忘れた。けれど戦後70年経った今も、カンナの花の群れからは広島の声が聞こえてくるのだ。  私には。   
                                                    M・Y