春に追われし花も散る


小さいころから父に連れられていった
映画が大好きになり、
高校になると邦画洋画問わず、
よく名画座に行くようになった。
ヤクザ映画はあまり好きではなかったが、
なぜか高倉健さんの作品はたまに見た。
一番印象に残っているのは
映画の一場面とかではなく、
観に来ている観客の反応である。
ちょっと街で合うと怖そうなお兄ちゃんが、
大画面に向かって「健さん!!」と絶叫し、
辺りを構わず号泣する。
別の席では革命とか書いたヘルメットをかぶった
数人が真剣な表情で見いっている。
てんでばらばらで、しかし熱い地場がそこにあった。
健さんは逝ってしまった。
あの熱い観客達は今何を思うのだろう。


shinya