しばらくのご無沙汰でした⑰

時が経つと自然に親しさも増してくる。
看護師になった理由とか、「一人っ子で看護師してたら行き遅れるわ」とか、愚痴をこぼして行く人も何人かいたなァ。
なかには〝私は見本のような看護師でしょう〟と自分だけ頑張って患者の身になってない看護師もいた。その人には 思い込みのMさん と記録した。
一人ソバージュの助手さんがいた。その人の扱いは大胆で荒っぽいのだ。パジャマに着替えるのを手伝ってもらった時のこと。  ズボンを履きかえるのに普通は靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、そしてズボンを履きかえる。ところが彼女は一度に三点とも引っ張ってしまうのだ。
ちょっとひどいじゃないですか? 
その人には ラーメン女 と命名してあげた。その話をリハ友に話すと皆も納得して「今夜の泊まりはラーメン女やから気をつけようぜ」という具合に流行って行った。

慣れてくると足音で分かるようにもなった。
一人いつも疲れた足音で笑顔の少ない人がいた。私の会話にもあまり乗ってこない。でもある日「Yさんは今川やねんね。私は針中野やねんよ」と言いだした。
「へ〜。いいよね針中野は商店街があるし(物価が)安くて良いよね」と言うと「そりゃぁ今川よりは安いかもしれへんけど、私らには高いわ。小さな家やけど2500万もしたんよ。まだ20年もローンあるねん」
なるほど。足音の重さと笑顔の少ない理由が 読めたぞ。
その人には 針中野のNさん と書いた。
                     M・Y