兵共が夢の跡…フィンランド版  2

4つの島じゅうが要塞として作られたここスオメリンナ島は全てが闘いの為の、暮らしのにおいがする。きっちりと残されている建物の窓からは、当時の兵士達がこちらの様子を窺がっているようでゾクゾクしてくるのだ。
狭い抜け道のような通路があった。
向こうには海が広がっている。遠くからガチャガチャと鎧を鳴らし、靴音を響かせて勇敢な兵士達が駈けて来そうな気がした。しばらく通路の前でぼんやりと彼方の海を見ていた。
静けさが、遠い昔に私を引っ張って行く。

この静けさも、通路を吹きぬ抜ける風も、空の青さもその頃と変わっていない。
暑いくらいの太陽の下、ごとごとと車椅子で歩き回ったのだ。敷き詰められた石畳は、角が滑らかにすり減っていて優しく私を揺らしてくれた。

1991年に世界遺産に登録された値打ちはあるわ。
                       M.Y