夢の中へ行ってみたいと思いませんか?


今でもたまに夢にみる光景があります。
私は中学から西宮の関西学院に通っていました。
高校になってからはあまり優秀な生徒ではなく、
(もちろん中学の時もですよ)
学校を楽しむことも出来ず、
放課後の草野球が一番の楽しみでした。
グランドで遊んでいるとほとんど毎日のように
通ってくる大学生がいました。
彼は冬でも夏でも常に学ランをばしっと来ていて
決して半袖になったりコートを着たりはしません。
我々とはさほど年も変わらないに
すっかり大人びた雰囲気を身につけ、
どうどうと歩いてきます。
グランドの端にある鉄棒の所までくると、
帽子だけを脱ぎ、一番背の高い鉄棒にぶら下がります。
そしておもむろに懸垂を始めます。
普通の懸垂ではなく身体を持ちあげた時に
手の位置が頭の後ろに来るスタイルです。
呼吸をまったく荒げることなく数十回懸垂をすると
静かに着地し、しばらくすると
どこかに消えて行きます。
私は彼がいる間気になって気になって、
よくエラーをしてしまうのでした。
いったい彼は何者だったのでしょうか?
やがて私は卒業してなんとか大学に進学し、
高校のグランドに行くことはなくなりました。
したがって彼がその後どうしているのか判らないですが
大学のキャンパスで見かけることはありませんでした。
夢の中に出てくる彼は今でもキリリとしていて
ポカーンと見つめる我々の視線には全く無頓着です。
一度確かめにいこうかなあ。
ひょっとするとまた彼に会えるかもしれません。
そうしたら私は勇気を持って
「コンニチワ」と言おうと思います。

shinya