バルト海の海は重い碧

[人っ子一人いない海辺にいる。
ざぶんざぶん と打ち寄せる波の音だけが包み込んでくれる。ここはバルト海なのだ。地図でしか見た事のない海が今私の目の前に広がっているのだ。北欧へ、二人だけで(ツアーではなく)来れた実感が、波の音と一緒に押し寄せてくる。
こんな波打ち際に高い建物がある。ガイドブックを見るとそれは弾薬庫の跡だとか。ここはロシア、ドイツ、デンマークなどから度々責められたのだ。それも海からなのだ。ここは弾薬庫であり見張り台であり重要な要塞だったのだ。
あの小さな窓からは、男達が命を掛けて見張っていたのだろう。
遠い、遠い昔のこと。  ただ波の音だけが歴史を刻んでいるのだ。その中に車椅子で遠いJapanから来た人がいたこと覚えておいてね。     M.Y