生「言葉に出来ない」を聴きましたその2


忘れられないライブがある。バンド名はマウンテン、
あまり有名ではないが一部のロックファンにはカリスマ的人気があった。
厚生年金だったかフェスティバルだったか忘れたが、
大ファンだった私はその場にいた。
当時過激なタイプのライブでは観客が騒がないように
通路にガードマンがずらっと並ぶというのが普通であり、
みんながステージに方に向いているのに
制服を着た軍団がこちらを向いているのが
かなりうっとうしかったのだ。
演奏が始まる。当然のことながら立ちあがって踊ろうとすると
いちいち彼らが注意する。
我々のフラストレーションはどんどん溜まっていった。そして
彼らの代表作である「ミシシッピークイーン」のイントロが始まる。
ギターのレスリーウエストが片手を振って我々を誘った。
その瞬間自分の中の何かがぷつんと切れた。
気が付くと後ろの方だった自分の席を飛び出してステージに向かって走っていた。
周りを見るとやばそうな奴がいっぱい突進していく。
立ちふさがっているガードマンは一瞬は止まれの合図を送ったが、
危険を感じてすっと身体を引き、我々を通した。
踊り狂う観客の中で、ぶすっとしながらそれでもちゃんと立っている彼らを見て
私は音楽の持つ無限大の力を心から味わっていた。

shinya