不便は便利な言葉


何週間か前、石山寺へ行った。
桜はまだチラホラだったけど、もともと“花より団子”なのでお蕎麦を食べに行ったのだ。
薪ストーブのある素敵なお店で味も最高。蕎麦はもちろんのこと大根おろしとネギの味がこれまた最高。
帰り際に野菜の特産館を教えて貰い、行った所大根とネギだけが売り切れていた。ショック!
店員のおばちゃんが気の毒がって美味しいお豆腐やさんを教えてくれる(まるで藁しべ長者だ)
行って見ると確かにお豆腐屋なんだが何故か『手作りドーナッツ』という張り紙が。
ショーウィンドウもない小さなお店。ガラスの戸棚にお豆腐のパックとドーナッツのパックと素朴なおじさんが…
おじさんは言った。
「あんたいつから足悪いのんや」  「生まれた時からですわ」
「へ〜 ちっこい時からかいなぁ  そりゃ不便やなァ」 もう絶妙のタイミングと絶妙のいたわりと絶妙の優しさ…だった。
こんな時“かわいそうに”“気の毒に”“大変やね”と言うのが大体の、定番の言葉であるが“不便やなぁ”ははじめて。
しかし、そうなのだ。不便なんだよ。それも、とてもとても不便なんですよ。
これいいねぇ。この言葉気に入ったよ。おじさん、この言葉貰いましたよ。 気持ちは軽くなるし、的を得てるし最高やんか!!
お豆腐と厚揚げを買い、追加にドーナッツも5個入り一パック。
「このドーナッツもおじさんの手作り?」 「そうや。豆乳とオカラで作ってんねん。美味しいで〜」
レシートを見た。ドーナッツ50円。ウッソ〜〜〜。どう見ても一個10円。今時こんなんあるの?
小さい出口をくぐる時「ほんまに不便やなァ、気ぃつけや」と言ってくれた。

車の中でドーナッツを食べた。美味しかったんですよ、これが。
もっちり ほくほくしていて、ほんのり甘くて最高のドーナッツだった。また食べたいよー。
                                            M.Y