この感動が伝わればいいな!


3分間の暗闇が続いた。
今は皆既日食の原理や宇宙の様子が普通にわかるけれど、
これが何千年も前の人々が体験したら、
それはそれは恐ろしいことだっただろう。
”神様の怒りに触れた”とか”天変地異の前触れだ”と恐れた、
と何かで読んだことがあるが、よく分かる。
まるで地球が無くなるように思ったのだろうなあ。
それにしてもこれだけの勢いで燃えている太陽は
燃え尽きることは無いのだろうか。
このエネルギーだけで地球上の生物を育み、実らせ、命の源になっている。
ずっと皆既日食が続いて暗闇の世界なら、生物は絶滅するのだもの。
たった一つの太陽で地球は生きているんやで。
太陽さん。あんたは偉い!
そして、宇宙の計り知れない不思議と、
どこまでも踏み込んでいく人間の凄さに敬服と脅威を感じたが、
自然は、まだまだ人間なんてちょろいちょろい
と言ってるような気もした。
10時56分 第三接触。
黒い太陽の右上に一点の光が差した。ダイヤモンドリングだ。
絶叫のような、悲鳴のような歓声と拍手が島を揺るがせる。
あちらこちらからカメラのシャッター音が競うように響き、
島独特の指笛が、リングに届け!とばかりに鳴り響いた。
太陽の回りは、はっきりとした光のリングで囲まれ、
右端には大粒の光の雫が、光線の玉が姿を現したのだ。
オーケストラなどないはずなのに、空中に音楽が流れ、
無数の大合唱が聞こえた。
まるでルネッサンス絵画の中にいるようだ。

(もう一回続きます)