感動の瞬間

ブログを執筆しているM.Yこと山口美年子さんが
鉄道身障者福祉協会が出している
リハビリテーションという雑誌に
連載されています。
なかなかいいので最新号のものを全文紹介します。 

2009/7/22 Ⅲ

朝からの雨はすっかり上がったけれど、灰色の薄雲がゆっくり流れている。
お願い、晴れて! みんなの願いは一つになっている。
その時ひとひらの雲間から太陽が覗きだした。
そして太陽は現れたのだ。
その時、欠け始めた。第一接触だ。
「やった やったあ」という歓声が沸き上がった。
みんな思い思いの日食グラスを掛けて天を振り仰ぐ。
草の上に寝ている人もいる。
9時36分 食は始まった。息を飲む瞬間だった。
ゆっくりと、ほんとうにゆっくりと、丸く欠けていく。
この影は月なんだ。今まさに月が地球と太陽の間を横切っている瞬間なんだ。
日本国内での46年振りの皆既日食が始まったのだ。
音もなく太陽は欠けて行く。
10時15分 半分の太陽になった。
そしてピッタリと太陽に月が重なる時はもうすぐだ。
周りはどんどんと暗くなり、喧しいほどの蝉の声がピタリと止んだ。
気温もグンと下がりだし涼しくなる。
10時53分 突然冷たい風がザーツと吹き、ガジュマルの木々はざわめき、
太陽が消える瞬間のダイヤモンドリングが輝いた。
それは、暗い空に吸い込まれるように消えていく太陽の、
最後の滴のような光だった。
歓声が上がり、そして静かに消え、そして、黒い太陽がそこにあった。
辺りは夜のように暗くなる。
その時、黒い太陽の周りに虹が出現した。太陽を取り巻く丸い虹だ。
不思議な美しさだった。
「奇跡だ!」という声も聞こえる。
もう日食グラスを外した。
黒い太陽の回りに星が小さく煌めいている。水星と金星だ。
太陽の表面からはメラメラと揺らめくコロナが....。
燃えている太陽の炎が見える。プロミネンスまで見える。
本当に太陽は燃えてるんや。

to be continued