阿修羅像に会った

カナダから帰ってきた従姉妹に会えたのも嬉しかったけれど、もう一人、とうとう会えた人がいた。奈良の興福寺に帰ってきた阿修羅像だ。
高校生の時から会ってみたかったんだ。
一時間待ちの末にやっと会えた。爽やかな日差しの中で一時間も待っていたので興福寺の中に一歩入った途端、暗い!と感じた。空気もひんやりと身体を締め付ける。
天井は高く、まるで地面の底の、別世界に来たようだった。
そこに阿修羅は凛として立っていた。
細くしなやかに伸びた6本の腕は、空気の中に浮いている。悲しそうで、賢そうで、厳しいその表情からは、他人を許して自分をしっかり見つめなさい、と声が伝わって来そうだ。
思っていたより小さかったけれど、見つめている間に大きなお姿に見えた。
威圧されている自分が感じられた。
他人を許せるしなやかな心、悲しみを飲み込める強い心、
そして、穏やかな慈悲の心を与えて下さい、と祈らずにはいられなかった。  M.Y