Here comes the sun


新月が作る地球上の影が喜界島を完全に覆いつくそうとしていた。
太陽は今や細く削られたカマのようであり、
もし私が日蝕という現象を知識として知っていなければ、
この世の終わりかと思うほどの
不思議な光景である。
日蝕メガネを外して、見てみる。
ほとんど針金くらいの太陽から出る光は
いまだにまぶしい。
何という太陽の力。
カマがもっと薄くなり、端の部分がかけてある1点に近づく、
「消える」と思った瞬間ダイヤモンドリングが現れた。
凄い、美しい、その言葉しか浮かばない。
周りの人達も口々に同じようなことを叫んでいる。
そして完全に光は無くなった。
あわててメガネを外し肉眼で見る。
そこには夢にまで見た黒い太陽がいた。
暗くなった空にはいくつかの星が見える。
冬の星座であるオリオンも輝いていたそうである。
私はただただ見つめた。
もう周りの人の声も聞こえない、
自分と見事なコロナを見せる太陽だけが
存在している。
その太陽が涙でいびつになった。
この生命体が生きてきた何十億年という時間を思った。
自分が生きてきた何十年かを思った。
私より先に天に帰った人達の時間を思った。
間違いなく私達は宇宙人だと知った。
自分は一人だけれど一人じゃないと感じた。
やがてまたダイヤモンドリングが現れ
世界はまた新しく生まれ変わった。
命よ永遠なれと私は小さく祈った。

shinya