ヒカゲヘゴの秘密


島の中心地である「湾」の集落から家に帰る道の途中で
気になる看板があった。
結構目立つ色で「ヒカゲヘゴ」と書いてある。
気になって仕方ないので、ある日探検することに決めた。
島の周りを回る大きな道からこの看板のところを入っていく。
しばらく行くとまた同じ看板がある。そこを指示通りに曲がる。
ここまでは順調であった。
しかしその先、行けども行けども何の案内も無い、
なんの目立つ物体も無い。
しばらく探したのだが結局その日はあきらめて帰った。
だがやはり気になる。
島での滞在期間がどんどん過ぎていく。
意を決してもう一度挑戦することにする。
二つ目の看板から歩くような速さで車を進めると、
あったあった、何か奇妙な絵のようなものが。
手前にある看板に比べてかなり地味なので、
何度通っても見逃していたのである。
よくみると写真ではなくへたな絵で、
そのあたりの景色を描いているようだ。
その絵の中の一部が白い線で囲ってあり、
どうやらその場所に「ヒカゲヘゴ」なるものがいるようだ。
改めてその場所から見える景色とその絵とを見比べた。
トウキビ畑が広がった先に森がうっそうとしている、
島ではごくごく当たり前の景色であり、
その絵がどこを表しているのかわからない。
目印のようなものは絵には描かれていない。
全く意味のない絵である。
多分植物なのであろうということは
何となく分かったのであるが、
それだけで後は判らず仕舞いである。
その日毎日のように繰り広げられる宴会に集まった人達に
「ヒカゲヘゴ」のことを聞いてみたのだが、
誰も知らなかった。
ヒカゲヘゴはいまだに
秘密のベールに包まれたままである。


shinya